婦人科
子宮の病気
子宮は、骨盤のほぼ真ん中にあり、洋梨をさかさまにしたような形の袋状の器官です。成人女性の正常な子宮のサイズは鶏卵くらいの大きさです。子宮体部(しきゅうたいぶ)と子宮頸部(しきゅうけいぶ)に分かれています。膣に近いほうを子宮頸部、奥を子宮体部といいます。集団検診での子宮がん検診は、子宮頸部にできる癌の検査です。子宮頸部にできる病気と子宮体部にできる病気は異なります。
子宮頸癌
(しきゅうけいがん)
子宮の入り口にできる癌です。初期には自覚症状がないことが多いです。自覚症状がある場合は不正性器出血、性交後出血で気づかれることがあります。20-30代でみつかることも多いです。
子宮体癌
(しきゅうたいがん)
子宮の奥にできる癌です。子宮内膜から発生するため、子宮内膜癌ともいわれています。発症は子宮頸癌より遅く50-60代が多いですが、時には30代でみつかることもあります。自覚症状としては不正性器出血が多いです。
子宮筋腫
(しきゅうきんしゅ)
子宮の筋肉から発生する良性の腫瘍です。3~4人に1人がもっているともいわれています。症状がなければ、治療の必要はありませんが、生理があっている間は大きくなる可能性があります。症状は生理の量が多い、血の塊がでる、期間が長い、生理痛がひどい、腹部になにか硬いものがふれる、貧血などがあります。さらに子宮筋腫が大きくなると圧迫により、尿が近い、尿がでにくい、便秘、腰痛などの症状もみられ、時には不妊や流早産の原因にもなります。症状の強さは子宮筋腫のある場所、大きさや個数などによって異なります。
子宮頸管ポリープ
(しきゅうけいかんぽりーぷ)
子宮の入り口にできるポリープです。検診のときに偶発的にみつかることがほとんどです。時には不正性器出血の原因となることもあります。外来で切除できるものが多いです。
子宮内膜ポリープ
(しきゅうないまくぽりーぷ)
子宮の中にできるものを子宮内膜ポリープといいます。自覚症状としては生理の量が多い、生理の期間が長い、不正性器出血があるなどがあります。
骨盤臓器脱
(こつばんぞうきだつ)
加齢や出産により、骨盤の底を支える筋肉や靱帯が緩むことが原因で、子宮、膀胱、腟壁、腸が下がってくることで起こります。自覚症状としては膣からピンポン球のようなものがでてきている、尿がでにくい、尿漏れがある、便が出にくいなどがあります。朝より夕方、腹圧がかかるようなことをした後に気づきやすいです。
子宮内膜症
(しきゅうないまくしょう)
子宮内膜に似た組織が子宮内膜以外にできるものです。卵巣、腹膜、子宮筋層(この場合は特別に子宮腺筋症といいます)、腸、めずらしいところでは肺、尿管、膀胱などあります。症状としては腹痛、生理痛、できる場所によっては血尿、血便などもあります。生理の周期と一致して痛みを生じたり、おなかのなかが癒着したりすることがあります。また、不妊の原因になることもあります。
卵巣卵管の病気
卵巣は、親指大の小さな臓器で左右に1つずつあります。卵巣から卵子が、毎月1個ずつ卵巣から腹腔内へ飛び出します。それが排卵です。また、卵巣は、妊娠や生理をコントロールする2種類の女性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)をつくっています。卵管は子宮と繋がっている細い管状のもので、卵子と精子が出合い、受精する場所です。子宮外妊娠は卵管妊娠がほとんどです。
卵巣腫瘍
(らんそうしゅよう)
特に症状なく、偶然みつかることも多いです。症状がある場合はおなかが張る感じ、痛み、サイズが大きくなると頻尿などがみられます。卵巣腫瘍には良性、境界悪性、悪性のものがあります。腫瘍の中身により漿液性、粘液性、奇形腫(きけいしゅ)線維腫(せんいしゅ)などに分類されます。
チョコレートのう胞
(ちょこれーとのうほう)
子宮内膜症が卵巣にできる場合をチョコレート嚢胞といいます。卵巣嚢胞(らんそうのうほう)の中身が出血であるため、チョコレート様なのでこのような名前です。チョコレート嚢胞自体は良性ですが、一部にがん化するリスク(0.7%程度)があります。手術以外に子宮内膜症に対するホルモン療法があります。
卵巣出血
(らんそうしゅっけつ)
急な腹痛を生じます。卵巣から何らかのきっかけ(激しい運動、性交渉など)で出血がおこり、卵巣内だけでなく、おなかの中に出血が広がりより痛みが増します。通常は経過観察で症状が軽くなることがほとんどですが、出血が出続けて貧血が進む、出血が増える場合は手術を行うこともあります。
卵巣腫瘍茎捻転
(らんそうしゅようけいねんてん)
急な腹痛を生じます。卵巣腫瘍がねじれて痛みを生じます。完全にねじれた場合は、痛み止めの効果がすくなく、緊急で手術を行う必要があります。
卵管水腫
(らんかんすいしゅ)
卵管の中に液体がたまります。特に症状がなければ治療の必要はありません。卵管結紮術、癒着があるなど卵管の通りが悪くなっている場合にできやすいです。
卵巣癌
(らんそうがん)
卵巣にできる癌です。症状がある場合はおなかのはり、太っていないのにおなかがでてきた、スカート・ズボンがきつくなった、腹痛などですが、症状がない場合もあります。卵巣癌が疑われた場合は高次医療機関に紹介します。
腟、外陰の病気
膣は、子宮と外陰部をつなぐ長さ7cmほどの粘膜におおわれた器官です。外部と子宮をつないでいます。腟内では乳酸菌(デーデルライン桿菌)が存在することで酸性(ph3~5)を保ち、外部から子宮へ病原体が侵入しない環境を保っています。 外陰とは生殖器のうち体外に現れている部分をいいます。外陰部には大陰唇,小陰唇,陰核,腟前庭,処女膜などがあります。
細菌性膣症
(さいきんせいちつしょう)
おりもののにおいや増加を認めます。無症状な場合は治療の必要性はありません。善玉菌である乳酸桿菌(lactobacillus属の菌)によって膣内は酸性に保たれています。乳酸桿菌が減少することにより、ほかの菌が増加することにより引き起こされます。
萎縮性膣炎
(いしゅくせいちつえん)
おりものの異常やデリケートゾーンの乾燥感、かゆみ、性交痛などを認めます。女性ホルモンが低下することにより、膣粘膜が萎縮・乾燥し、炎症を起こすことで引き起こされます。
性器ヘルペス
(せいきヘルペス)
外陰部に水疱(すいほう:水ぶくれのこと)や潰瘍(かいよう)ができ、痛み・かゆみを生じます。単純ヘルペスウィルスに感染することが原因で、キス、性交渉、ウィルスが付着したタオル、食器、便座の共有などで起こります。
膣癌
(ちつがん)
膣にできる癌です。
外陰癌
(がいいんがん)
外陰にできる癌です。
尖圭コンジローマ
(せんけいコンジローマ)
外陰部、肛門、膣内、子宮の入り口などに鶏のトサカやカリフラワーに似たイボができます。症状がないことも多いです。ヒューマンパピローマウィルス(HPV)6型、11型感染で起こる性感染症です。子宮頸がんワクチンのガーダシル(4価)、シルガード(9価)はHPVに対しても有効です。
性感染症
B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、梅毒、HIV、淋菌、クラミジアの検査が可能です。
梅毒
(ばいどく)
性交渉でうつります。梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌による感染症です。病期によって、症状の出現する場所や内容が異なります。血液検査で感染しているかどうかがわかります。治療は抗菌薬です。治療をしないと全身に細菌がまわり、神経や脳にも入り込み症状を引き起こします。
淋菌
(りんきん)
性交渉でうつります。自覚症状がない場合もありますが、腹痛、おりものの増加、不正性器出血、発熱などを認めます。
クラミジア
性交渉でうつります。自覚症状がない場合もありますが、腹痛、おりものの増加、不正性器出血などあります。のちのち不妊や子宮外妊娠の原因になることがあります。
細菌性膣症
(さいきんせいちつしょう)
おりもののにおいや増加を認めます。無症状な場合は治療の必要性はありません。善玉菌である乳酸桿菌(lactobacillus属の菌)によって膣内は酸性に保たれています。乳酸桿菌が減少することにより、ほかの菌が増加することにより引き起こされます。
細菌性膣炎
(さいきんせいちつえん)
おりものの増加やデリケートゾーンのかゆみなどの症状を認めます。大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌といった一般的な細菌が膣内で過剰に増殖することが原因です。
カンジダ
外陰部や膣内のかゆみ、痛がゆい、おりものの増加など認めます。おりものはカッテージチーズ様、酒粕様で白色のポリポロしたおりものが特徴的です。カンジダはカビの一種であるカンジダ・アルビカンス(C.albicans)やカンジダ・グラブラータ(C.glabrata)などが原因菌です。免疫力が落ちた時、抗菌薬を内服した時、生理後など症状が現れやすいです。
更年期
ホルモン療法・漢方薬処方など行います。
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閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といいます。日本人の平均的な閉経年齢は50歳頃です。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。 ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、めまい、動悸、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさ、気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠など多岐にわたります。 主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことですが、身体的因子、心理的因子、社会的因子が複合的に関与して発症します。治療として、ホルモン療法、漢方薬、向精神薬などが適応になります。
不妊
一般的な不妊検査、タイミング療法など行います。人工授精、体外受精は行っておりません。
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「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合と定義されます。不妊の原因としては、男性因子、女性因子、両方、原因不明の場合もあります。 男性因子としては造精機能障害(精子の数が少ない、運動性が悪いなど)、精路通過障害(精子の通り道に問題が有り、精子が排出しづらい)、性機能障害、女性因子としては、排卵因子(排卵障害、ホルモンのバランスなど)、卵管因子(卵管が閉塞している、とおりが悪い)、子宮因子(癒着、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ)、頸菅因子(頸管粘液が少ない、状態がよくない)、免疫因子(精子を攻撃してしまう抗精子抗体がある)など原因としてあげられます。当院で可能な検査としては、女性因子である排卵因子、子宮因子についての有無は可能です。